容赦なく照りつける真夏の太陽に挑戦するかのように建つ現代建築、私は強い陽射しから逃れるように二重の自動ドアを抜けて建物内に入った。午後の催しを控え賑わうエントランスホール、空調による冷えた空気が心地よい。肺の中に残った熱気をフーッと吐き出す。
府中の森芸術劇場は、客席数2000を越える「どりーむホール」の他に、「ウィーンホール」と「ふるさとホール」計3つのホールから成っています。バレエやら音楽の発表会など入場無料の催しもあり、府中市民のみならず多くの人々に利用されています。「ウィーンホール」に入ってみましょう。
ガランとした後部座席にそっと腰を下ろします。晴れ着をまとい緊張した面持ちの幼児、入れ替わり立ち代りピアノを弾きバイオリンを奏でます。それを熱心に見守る前部座席の家族、時折ストロボの閃光が思い出とすべく今を切り取ります。
先生による模範演奏でしょう、高さ10メートル幅5.7メートル、3636本のパイプを持つ巨大なオルガンが咆哮を始めました。重厚に、ときには高くときには低く。両側壁上部の淡いステンドグラスの灯りに目を遣り、何度も繰り返される旋律をじっと聴いていると、あたかも中世の教会へでも迷い込んだような錯覚に陥ります。
何百万年も前森から草原に出た我々の祖先、やがて人間となり地球上を席巻、文明を手に入れ森を切り開く。増殖する建造物。その一つの劇場という温度調整された人工空間で、外部の焼け付くような陽射しを他所に中世の荘厳な音楽に耳を傾ける私。夢だろうか、現実だろうか、私の想念はホールの屋根を突き抜け、時空を超えて遠い宇宙の果て迄も広がるのでした。
帰り掛けに寄った1階のレストラン「ノービス」、隣接する「府中の森公園」の濃い緑を見ながらビールを飲みました。いったい人類は何処に行こうというのでしょう。宇宙から見れば、生まれては儚く消えて行くビールの泡、のような存在でしかないのかもしれませんね。
掲載日付:2007/08/28